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2020/06/24

進化する「○○消費」

 

時代とともに変化してきた消費者の購買傾向を、3つのキーワードで語ることがあります。まず、主に1970~80年代の消費観として挙げられるのが、「モノ消費」です。これは、モノ自体の価値が高く評価されていた時代の消費行動で、製品・サービスそのものの消費を意味します。具体的な消費対象は、家電・服飾・店での食事などです。

 

次に、主に1990年代後半~2000年代に広まったのが「コト消費」です。コト消費とは、商品自体よりも、特別な体験や人間関係を深める機会など、特別な時間を過ごす「体験」の消費を指します。つまり、旅行やイベント、パーティーなどはこのグループに入ります。

 

そして、主に2010年代~(特に震災以降)に顕著なのが「イミ消費」と言われています。ホットペッパーグルメ外食総研のエヴァンジェリストである竹田クニ氏によれば、イミ消費とは「商品・サービスそのものが持っている機能や効能だけではなく、その商品が付帯的に持っている社会的・文化的な『価値』に共感し、選択する消費行動」です。

 

例えば、フェアトレードチョコレートの購入にはイミ消費の側面があります。有機栽培されたカカオ豆を適正価格で買い取り、カカオ生産者の健康や環境を守り、さらに教育支援などのサポートをしている団体。そういった団体からチョコレートを買うことで、消費者は自らの購買行動が社会貢献につながっていると感じられるのです。

 

 

「意義の消費」3つの顔

 

社会的な意義をアピールしプロモーションにつなげている事例は多々ありますが、ここでは2007年~2016年に展開されたヴォルビックの「1L for 10L」プログラム(日本で1Lの水が購入されるとアフリカに10Lの水が供給されるというもの)を広報、営業、そして個人それぞれの視点からご紹介します。

 

Volvicによる「1L for 10L」キャンペーン

出典(https://www.kirin.co.jp/products/softdrink/volvic/1lfor10l/

 

まず広報視点では、この取り組みはプログラムを通じて社会全体の問題解決を貢献しているということのアピールとなります。SDG’sに紐づけることも可能で、事業としてアフリカの水不足問題を解決することを推進するプログラムであるという訴求にもなるでしょう。

 

次に営業視点でみると、この取り組みは「1Lの水を買うことで、アフリカに10Lのきれいな水が提供されます。どうせ水を買うなら社会貢献できる水を買いませんか?」というセールストークを可能にする材料であると考えらえます。いわゆるコーズ・リレイテッド・マーケティングの一例として捉えれば、環境問題に配慮している製品であるという大義名分のもと、商品の購入を促していることになります。

 

個人の視点では、この取り組みはイミ消費を喚起するアイコンとしての位置付けになりそうです。例えばコロナ禍によって衛生意識や社会貢献意欲が高まっている今、水を買うだけでアフリカの子どもたちを救えるとなれば、貧困問題などに関心のある消費者にとっては社会貢献できるまたとない機会となるからです。

 

 

「正しい消費」の行く先

 

コーズマーケティングとイミ消費の重要な違いは、消費者の思想が購買行動にどの程度影響を与えると想定しているかどうかです。

 

コーズマーケティングの着地点は、それが広報活動の一翼であることからもわかるように、消費者が自社製品の社会貢献的価値に気づくように仕向け、いわば消去法で購買につなげることにすぎません。一方、イミ消費は文字通り、購買行動が生み出す「イミ」を自らの思想と照らし合わせて価値を見出した消費者による行動です。

 

振り返ると、商品購入に際して社会的意義を重視する消費者が増えた背景として、竹田氏は2019年11月26日の「BAE」において、次のように述べていました。

 

「もともと以前からそういった傾向はありましたが、東日本大震災という未曾有の災害を体験したことをきっかけにその意識が強まったといえます。また近年の甚大化する自然災害などの経験によって、さらに『地球市民として正しい消費をしよう』という気持ちが加速し、定着してきたわけです。」

 

製品が市場に溢れた現代。サブスクリプションモデルを使用したり、SNS上で他者の意見に触れたりといった体験が日常化する中で、消費者は自らの消費の意義を問うべくして問うているように見えます。そして今、コロナ禍も相まって、特に社会的に「正しい」ことに対する共感を触媒とする消費の土壌形成が進んでいるようです。

 

その一方で、社会的意義への共感を喚起し消費行動につなげようとする手法が長続きしないであろうことは、「1L for 10L」の例から予想できます。このようなアプローチでは、消費者各々が持つ価値観にまで届かないでしょう。消費者が考え得る「イミ」の公倍数に依るのではなく、個々人の「イミ」をどう捉えるかが、今後のカギになりそうです。

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