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旬ワード|人間拡張テクノロジー

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2020/07/22

「自動車は人間の足の拡張である」

こう論じたのは、メディア研究者のマーシャル・マクルーハン(1911~1980)。彼は「メディア」という言葉を「身体の拡張」と位置付けました。そして今、あらゆる分野において、「人間拡張テクノロジー」が次々と萌芽しています。

 

 

「拡張」する身体と脳 

 

ロボットやAIなどを駆使して、人間の能力を高める「人間拡張」は、大きく2つのパターンに分けられます。第一に、身体の拡張:車や眼鏡を代表とする機械によって、人間の身体能力が補われたり増強したりするという考え方があり、さらに2つに分類できます。

 

まず、マイナスをゼロにするための拡張です。身体的なハンディキャップを解消することが目的と言えるでしょう。たとえば、視力を失った人が、義眼の視界をスマホ上に映せる装置を目に装着すること(アイボーグ化)や、義手を付けることなどはこのグループに入ります。身体の大部分を「拡張」させた人物―ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したピーター・スコット・モーガン博士(ロボット工学の専門家)は、自身の身体を機械に置き換える手術を2019年に完了させました。彼は「ピーター1.0」としての最後の投稿で、自分は死ぬのではなく変容するのだと綴っています。

 

 

モーガン博士のTwitter投稿

https://twitter.com/drscottmorgan?lang=en

 

次に、ゼロをプラスにするための拡張です。身体能力の向上が目的になっており、少ない力で重いものを持てるようになる「マッスルスーツ」などが例に挙げられます。「着る筋肉」とも紹介されており、文字通り筋肉を拡張する事例だと言えるでしょう。

 

第二に、脳の拡張:VRをはじめとしたテクノロジーによって、人間の認知スピードが向上したり認知情報が増えたりするという考え方です。脳の拡張には、スマートグラスなどに代表される「知覚の拡張」、ARやホログラムによる「存在の拡張」、そして他者の視覚などを共有する技術であるジャックインといった「認知の拡張」の3種類があります。

 

 

2020 渋谷拡張

 

「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」によって、渋谷が拡張しています。去る2020年5月19日(火)、「#渋谷攻殻 NIGHT by au 5G」を皮切りに「バーチャル渋谷」が渋谷区公認の配信プラットフォームとしてオープンしました。ここではアバターを作成して入場することで、参加者とバーチャル空間でコミュニケーションを取ることができます。

 

「#渋谷攻殻 NIGHT by au 5G」

https://www.fujitv-view.jp/article/post-106743/

 

 

さらに、リアルスタジオ「SUPER DOMMUNE tuned by au5G」からはアーティストによるライブ配信も行われています。このスタジオでは、5G通信を駆使したAR技術による演出が可能で、2020年6月24日には「DAOKO『anima』release Talk & Live」が開催され、世界から7万人に視聴されました。

 

「DAOKO『anima』release Talk & Live」

https://shibuya5g.org/article/daoko-anima-release-talk-live-report/)

 

 

拡張、そして融合

 

人間拡張が進むことで、リアルとデジタルの垣根はますます薄くなっていくでしょう。身体の拡張と脳の拡張では、影響範囲が変わってくることが予想されるものの、大局的にはリアルとデジタルの融合が加速していくという見通しが立てられそうです。

 

まず、身体の拡張の分野では、「超人スポーツ」が注目されるのではないかと推測できます。生得的な能力に依らない競技が増えれば、新しいユニバーサルスポーツとしての地位を確立するかもしれません。さらに、試合中に選手についての即時的なデータが見られたり、守備範囲がコート上に示されたりすれば、スポーツ観戦のあり方にもインパクトをもたらすでしょう。

 

次に脳の拡張の分野ですが、わかりやすいのは、ライブをはじめとしたオンラインイベントの増加です。従来ならば会場に足を運んでいたイベントも、オンラインで行われることが多くなっています。

 

この潮流は、OMOが進化する可能性を持っているように考えられます。デジタルでの購入の際ネックになりがちなのが、実際のサイズ感や感触がわからないということです。しかし、ARやVR、また知覚分野における拡張技術の発達により、商品購入をデジタルで選ぶのも、リアルな店舗で選ぶのも、違いがあまりないということになるかもしれません。その場合、両者それぞれに新しい顧客体験を価値づける工夫が必要になるでしょう。

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